ねぎ子のブログ

congzi's blog

世界遺産リスト㉘ 空を掴む~秘境チベットをめぐる旅~

中国駐在も2年以上経過した2014年中秋節。満を持して訪れたのは、中国西端の秘境、チベットです。チベットとは「神の地」という意味。文字通り、素晴らしい文化と自然に圧倒された4日間となりました。ラサを中心に今回の旅を振り返ります。

 

■Day1-一路チベットへ

現在、外国人は自由にチベットへ入ることはできません、チベット人ガイドと入境許可証が必要です。6月頃から旅行会社にコンタクトし手配を始め、入境許可証をゲットしたのは出発数日前という、少しハラハラする展開でした。許可証を待ちながら、出発1週間前からは漢方薬を服用し高山に備える。というのもチベットの平均海抜は4000m超え。本当はチベット鉄道でゆっくり移動すると体も慣れやすいそうだけど、時間がないリーマンは飛行機で入境するゆえ、事前の準備も入念にというわけ。

早朝に上海を出発し、西安経由、ほぼ時間通り夕刻チベット自治区の首府はラサへ到着です。飛行機を降りると、すぐ目の前には山が見える。

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ラサの歴史は古い。7世紀初め、吐蕃国王(昔世界史で勉強したな!)のソンツェンガンポ王が遷都して以来、ラサはチベットの中心です。ラサはチベット語で「山羊・砂」という意味。なぜこんな意味の名がつけられたかは、のちのち判明することに。

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空港を出て、チベット人のガイドさんと合流。この時点では、それほど空気の薄さは感じない。どうやらまだ自分の肺の中にも十分な酸素があるからだそうです。

 

空港から市内は1時間弱。車から見える景色は本当に絵葉書のよう。こんなに開けた空見たことがあったでしょうか。手を伸ばせば雲がつかめそう。

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ホテルに荷物をおろしたら、まずは市内をぷらぷらとして高度に体を慣らすことに。最初に向かったのは、ラサの中心にあるチベット寺院、ジョカン(世界遺産)です。

ラサに遷都しチベット統一を成し遂げたソンツェンガンポが唐から妃(文成公主)を迎えた話はけっこう有名ですね。ジョカンはこの文成公主のために建てられたと思われがちですが、もともとは、もう一人の妃、ネパールから嫁いだ王女が建築したものです。(だからネパールの方角を向いているらしい。)

なんでもこのネパール出身王女が、寺院を建てるのによい場所をなかなか見つけられなかったとき、文成公主が空高く指輪を投げて落ちた場所を選定。ここは沼地だったのだけど、寺院を建てるために、山羊を使って砂を運んでこの沼を埋めました。

さて、長くなったけど、ラサの由来にたどり着きました。チベット語で、ラ=山羊、サ=砂、なのです。

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後ろに見えるのがジョカン。今は中に祀られているのは文成公主の持参した釈迦牟尼像になっています。文成公主がもともと建てたラモチェという寺院(唐の方角を向いて建てられている)にネパール王女の釈迦牟尼が収められています。中身が入れ替わったのですね。

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入口を入ったところの中庭。まだ写真OKです。ここをさらに中に入り、お釈迦様の祀られている釈迦堂へ。チベットではお寺の中は時計回りで参拝するのが習慣。どこにいっても本当に時計回り。なんてことない道でもよく見ているとチベット人が時計回りに歩いていたりします。

中には本当にたくさんの像が祀られていて、ガイドさんが丁寧に説明してくれます。写真はとれなかったけれど、阿弥陀像、釈迦、弥勒菩薩のほか、チベット仏教のゲルク派開祖のツォンカパやその弟子の像なども祀られていました。ひとつひとつに物語があってとても興味深い。

さて、寺院の屋上に出るとこんな景色。

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寺院の前は広場になっています。ん?ズームしてみましょう。遠くに見えるのは…

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ポタラ宮ですね!ここから見ると、山の合間に浮いているようで本当に神秘的。

さて、ジョカンの屋上にはチベット仏教のシンボル、黄金の法輪と鹿。チベット寺院の門の上には必ずあるようです。法輪の意味については、仏陀の教えを語る必要があるのでここでは省略。

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こんな立派な金の釣鐘も。

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屋上に登るとき、階段をあがっただけなのに、少しくらくらしてしまいました。確実に酸素が薄くなっているようです。

 

さて、ジョカンをあとにして、ジョカンの周囲をぐるりと囲むバルコルという道を散策します。もちろんここでも時計回り!逆回りをしている人なんて、ほとんど見ない。

バルコルはもともと市場で、今はお土産屋さんなどが多いのだけど、巡礼者もたくさんくるので、五体投地でお祈りをしている人もたくさん見かけました。なんとなく、年寄りが多いとイメージしてたけど、若い人もたくさん。信仰心が厚いですね。

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この写真でも、大部分の人が背を向けて向こう側にむかって歩いているのが分かります。時計回り。

バルコルでは天朱というチベット特有の宝石をネックレスにしたものを購入。万事好転するらしいです!チベット人のお兄ちゃんが日本人と分かると割引してくれた。チベット人はやはりあまり漢民族が好きでないようですね。バルコルの至る所に掲げられた中国国旗には少し違和感もありました。チベットはやはり「チベット」としか形容できない独特の文化や歴史があるように思いました。

こうして1日目が終了。

 

■Day2-天の湖ナムツォ

ラサから北へ130キロ。中国第二の規模の湖、ナムツォへ。

旅程表には2時間半程度と書かれていたけれど、8月にバスの事故があった影響で、今は制限速度が設けられています。各区間で検問みたいなのがあって、指定の時間にならないとそこを通り抜けられないのです。結果、車は牛歩の歩み。結果5時間ほどかかりました~。

途中の休憩場所の景色。ちょっぴり曇り気味ですね。タルチョと呼ばれる5色の旗が特徴的です。(天、風、火、水、地を表すそう。)

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このナムツォ湖に向かう途中で、なんと海抜5190mのランゲン・ラと呼ばれる峠越えをします。この海抜の高さは、去年訪れた雲南省の玉龍雪山や香格里拉を超える高さ!!人生初ですー。

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さすがこの海抜で風が吹くと、寒く感じますね。

でもお陰様ですっかり高地に順応したのか、体調は万全。

そしてこの峠を越えて数十分走ると、見えてきました。

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ナムツォ湖は海抜4718m、チベット三大聖湖のひとつに数えられる、チベット仏教の聖地であります。

到着したら、とってもラッキーなことに雲が晴れました!というわけでランチもそっちのけでまずは湖の周りを観光。湖は鮮やかなセリアンブルー!ちょっと薄いこの水色と、後ろに見えるニェンチェンタンラ山脈に残る雪、そして真っ青な空、ぷかぷかと流れる雲。基本的に青と白の世界でなんとも幻想的な美しさです。

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ここまできたら、やれることはやるぞ!というわけで、ヤクに乗って記念撮影~(有料)。とても嬉しかったなぁ。

でも、ここでは色々なトラップも仕掛けられていて、注意が必要。そのへんに何気なく繋がれている小さいヤクの写真を撮ろうもんなら大変!突然地元のチベット人が出てきて撮影しただろ、金払え!とすごい剣幕。。。なんだか観光地化してがめつくなっているそんな姿に少しわびしさも覚えました。

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まぁ、何をおいても、天気に恵まれて本当によかったです。3時くらいにランチを食べて、また来たのと同じ時間をかけてラサまで戻りました。

疲れたけれど、大満足の2日目、終了!

 

■Day3-世界遺産ポタラ宮とラサ市内

ついに、ここまでやってきました。本日は50元札の風景、ラサの象徴ポタラ宮へ。

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ポタラ宮は、「宮殿」、すなわち、ダライラマの住む場所です。色を見ると分かるとおり、赤い部分(紅宮)と白い部分(白宮)の複合建築物。最初に白宮、のちに紅宮が増設されたとか。見学は指定時間制なので事前に整理券が必要で、まずこの整理券取得のために、朝早くから列に並びました。

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さて、時間になったら早速門をくぐり、階段を登っていきます。

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赤い部分は実は植物でできていました!ポタラ宮は毎年色を塗り替えるそうです。白い部分は上から白ペンキを流すらしく、確かにそうゆうまだらな模様が残っていました。

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上の広場に到着です。ここからいよいよ建物の中に入っていきます!中は撮影禁止なので写真におさめられず本当に残念!迷路みたいにクネクネしていて、それぞれの小部屋には各代ダライ・ラマの暮らしていた部屋、謁見室、会議室、お墓などなど、見学内容盛りだくさん。ダライ・ラマの政権の興りは14世紀。ツォンカパが戒律厳守のゲルク派(黄色い帽子をかぶっているのはチベット仏教の中でもゲルク派の人たちだよ。)を興して台頭、モンゴル族のハンから初めて「ダライ・ラマ」という称号をもらったらしい。ダライ=大海(モンゴル語)、ラマ=上人(チベット語)の意味です!

しかしもとは仏教への信仰をもとに興った政権だから、宮殿といっても質素なものなのかなと思いきや、各代ダライラマのお墓のきらびやかなこと!金ぴかの巨大な棺にこれでもか、というほど宝石がちりばめられていてびっくりしました。

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1時間ほどで外に出てきて、正面のポタラ宮広場から記念撮影。やはりチベットといえばこの景色でしょうね。

 

引き続き、市内を観光します。こちらはラサの庶民がお祈りに集まる場所、サンゲ・ドゥング

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老若男女、本当に熱心にお祈りしています。宗教の浸透力をまじまじと感じる。

 

さくさく紹介しましょう。お次はダライラマの夏の間の離宮、ノルブリンカを見学!こちらも世界遺産です。

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この離宮も中は広くて、各ダライラマの建てた離宮がいくつもあります。どれも、花に囲まれててとっても綺麗。地元の人がピクニックしているような様子もうかがえました。

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ここは一番よいなと思った離宮。ちょっとジブリに出てきそうな感じではないですか?それにしても、チベットの建物はどれも白・黒・赤が基調になっていますね。白色は文殊菩薩、黒色は金剛守、赤色は観音菩薩を意味しているそうです。

 

ここから少し車を走らせ、中心地から北にあるセラ・ウツェ山のふもとに立つセラ寺へ。ここはゲルク派の大寺院、今でも僧侶たちが修行に励んでいます。

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朝の曇りがちな天気から快晴になり、どんどん日差しが強くなってきました。ここセラ寺の名物は修行僧が行う「問答修行」の見学なんだけど、なんと我の訪れた日はこれが休み!ちょっと残念でした。

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色々見学しすぎてだんだんどこがどこか分からなくなってきましたが、この写真はお気に入り。山麓にあるのがよく分かりますね。

 

色々と見学してもまだ時間があったので、初日と同じ、バルコルに行って有名カフェレストランでお茶をすることに。ここは、詩人としても有名だったダライラマ6世が訪れては詩を書いていたという場所です。

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なななななんと!このカフェレストランで一番良い席がたまったま空いたのでそこに座れることに!!3階の角席で、バルコルを行きかう人たちを見下ろすことができます。観光できた人たちが名前と感想を書き残すノートにしっかり日本語で記録させて頂きました。ちなみに飲んだのはアップルラッシー。

 

カフェでラッシー飲んでも時間があまったので、一度ホテルに戻り休憩。ほぼ慣れたとはいえ、高度は高いので無理は禁物。少し暗くなったところでまた出発してチベット料理屋へ。高山ではお酒は飲まないほうがいいと言われたが、ホテルで休憩もしたし、という余裕から、チベットビールを飲むことに。美味。はははは。

 

さて、夜ごはんを食べ終わってから、歩いて再びポタラ宮へ!夜のライトアップを見るべし、とガイドブックに書いてあったので是非夜来てみたかったのです!

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じゃーーーん!!ポタラ宮広場横にある少し高い建物に登り(2元かかった)、斜めからポタラ宮の姿をとらえてみました。ものすっごく綺麗で幻想的だった!本当にここまで来てよかったよ~~~。大満足でラサ市内観光の3日目終了。明日はついに最終日。

 

■Day4-トルコ石の湖ヤムドク

最終日は朝市内を出発し、2日目同様、また急な山道を走っていきます。

今回の旅は2つも湖を見に行くという盛りだくさんの内容。本日の目的地は、ヤムドク湖。この日もいいお天気!まずは途中の休憩地点で記念撮影。だんだんポージングが中国化しているのはご容赦下さいませ。

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さて、標高4750mの峠を越えたところで急に目に飛び込んできたのが、このブルー!

トルコ石の湖と称されるのも納得です。もちろんチベット仏教四大聖湖のひとつです。

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さりげなく広がる湖ですが琵琶湖のちょっと小さいくらいのサイズ、だそう。

日本だと滋賀県はほとんど琵琶湖と誤解されているほどインパクトのあるサイズのはずが、この広大な大陸においてはなんだか普通サイズに見えるのが不思議。

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湖の近くまでいくと、このトルコ石ブルーは消えて、水色というか透明のような色に見えました。

 

この湖から空港へ向かい、今回のチベット旅行はお開きです。

チベットには独自の文化と信仰心の厚い人々の暮らしがあって、神々しい自然に囲まれていて、本当に神の地と呼ぶのにふさわしい場所だと思いました。

またいつか来る日まで!再見!